ドリンクの自販機にHOTとCOLDが共存できるのはなぜ?実はすごい自販機の秘密

10月に入って気温が下がり、だんだん温かい飲み物が美味しく感じる季節になってきました。そろそろ街中の自販機でも、「あったか~い」の割合が増えてきているでしょう。ところで、自販機では温かい飲み物と冷たい飲み物が共存しているケースが珍しくありませんが、なぜこのようなことができるのでしょうか。今回は、意外と知らない自販機の知識をご紹介します。




■自販機のHOTとCOLDの切り替え時期



まずは、自販機のHOTとCOLDの切り替え時期について知っておきましょう。多くの方がご存知の通り、自販機で売られている飲料のラインナップは季節に合わせて切り替わっています。大きく分けると「春夏バージョン」と「秋冬バージョン」があり、暑い季節には冷たい飲み物を、寒い季節には温かい飲み物を中心に販売しているわけです。では、バージョンの切り替え時期はいつ頃なのでしょうか?


一般的には、9月~11月にかけてだんだん温かい飲み物が増え、「春夏バージョン」から「秋冬バージョン」に切り替わっていきます。気象情報サイト「ウェザーニュース」が実施したアンケートによれば、9月の段階で温かい飲み物が売られていた自販機は40%弱でしたが、11月に入ると95%にまで増加しました(2018年)。多くの方の体感とも合致するのではないでしょうか。


ただし、バージョンの切り替えに明確な基準はなく、地域ごとの気候にも配慮して決められます。たとえば、温暖な気候である沖縄では、11月に入っても多くの自販機が「つめた~い」のみを販売しているのです。逆に、関東以北の比較的寒冷な地域では、HOTからCOLDに切り替わるのが早い傾向にあります。


また、ロケーションも重要なポイントです。たとえば、空調が効いているオフィスの中では、真夏だからといって冷たい飲み物がほしくなるとは限りません。むしろ、体が冷えるのを防ぐために、夏でも温かい飲み物を入れてほしいという要望すらあります。このように、何気なく切り替わっているように思える自販機のラインナップは、さまざまな点に気を使って決められているのです。




■ドリンクの自販機にHOTとCOLDが共存できるのはなぜ?



10月現在、自販機の飲料はCOLDからHOTへの切り替えが進んでいます。その過程で、1つの自販機の中にHOTとCOLDが共存している光景はよく見られるでしょう。完全に秋冬バージョンに切り替わっても、温かい飲み物に混ざって冷たい飲み物が売られていることは珍しくありません。なぜ、1つの自販機の中で温度の違う飲み物を販売できるのでしょうか。


その秘密は「ヒートポンプ」にあります。ヒートポンプとは、エアコンや冷蔵庫などにも使われている、低音の熱源から熱を集めて高温の熱源へ移動させるための装置です。これにより、まずはCOLD向けの飲み物を冷却し、その際に発生した熱を使ってHOT向けの飲み物を温めます。つまり、自販機の中で適切に熱を配分しているのです。


しかし、自販機内の断熱が不十分だと移動させた熱がまた移ってしまうので、効率がよくありません。そこで活用されるのが「真空断熱材」です。自販機の内部に使われている真空断熱材は、HOT用のブロックとCOLD用のブロックの間での熱移動を遮断します。このおかげで、どちらも適温を保つことができ、共存が可能になるのです。


ちなみに、温冷の切り替えは設定用のコントローラーで簡単に行えます。HOTに設定すると温風、COLDに設定すると冷風が吹き出して、ブロックごとにドリンクを温めたり冷やしたりできるのです。近年では、第三の選択肢「常温」を備えた自販機も登場しているので、冷たすぎず熱すぎない飲み物を好む方はチェックしておきましょう。




■日本は「自販機大国」。自販機は常に進化しています!



ここまで見てきたように、普段当たり前のように使っている自販機は技術の塊であり、常に進化を続けています。その最新トレンドは、スマートフォン向けアプリとの連携です。たとえば、日本コカコーラがリリースしたCoke ON(コークオン)は、飲み物を1本買うごとにスタンプが1つもらえ、15個貯まると飲み物と交換可能なドリンクチケットがもらえます。


また、ダイドードリンコのSmile STAND(スマイルスタンド)は、飲み物を買って貯めたポイントを楽天スーパーポイントやLINEポイント、Amazonギフト券などに交換できます。さらに、サントリーの「サントリーGREEN+」はトクホ飲料を買うと多めにポイントが貯まるなど、各社が実に多様な試みをしているのです。


自販機は今後も進化を続け、さらに便利で面白くなっていくと考えられます。そもそも、HOTとCOLDが共存する自販機も日本の発明であり、日本は「自販機大国」なのです。お近くの自販機に面白い商品や機能が追加されていないか、改めて確認してみてはいかがでしょうか。