電力需要ひっ迫はなぜ起きる?原因と私たちにできる対策を紹介

日本ではここ最近、電力の供給を需要が上回りそうになる「電力ひっ迫」がしばしば発生しています。これは大規模な停電である「ブラックアウト」にもつながりかねず、非常に危険な事態です。電力のひっ迫に対して、私たちは何ができるのでしょうか。ここでは電力ひっ迫が起きる原因や、一人ひとりができる対策をご紹介します。




■電力ひっ迫はなぜ起きる?



電力ひっ迫が起きる原因は、簡単にいうと「電力の需要と供給のバランス崩壊」です。通常、電力会社は電力の需要量を常に予測し、必要なだけの電力を発電・供給できるようコントロールしています。逆にいうと、想定を上回る需要の増加や供給の不足が発生した場合、需要と供給のバランスが崩れて電力がひっ迫してしまうのです。


運用開始されてから初めて「電力需給ひっ迫警報」が発令された2022年3月22日も、需給バランスの崩壊が発生していました。まず供給側の要因は、同年3月16日に発生した福島県沖を震源とする地震の影響で、計6基もの火力発電所(334.7万kW分)が停止していたことです。地震以降、電力の供給能力は大幅に低下していたことがわかります。


そして需要側の要因は、天候の悪さなどによる季節外れの寒さによって、暖房を使用する人が大きく増えたことです。これら2つの要因が重なった結果、電力の需要が供給を上回りそうになる状態=電力ひっ迫が発生し、警報の発令に至りました。6月後半から発生している電力ひっ迫も、火力発電所の休止や異常な暑さが主な要因です。


「だったらひっ迫する前に電力を貯めておけばいいのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、電気というエネルギーは長期間・大量に・安定して貯めておくことができません。つまり電力ひっ迫を回避するためには、需要を十分に上回る電力を供給し続けるか、供給量に合わせて需要を減らすかしかないのです。このことが対策を難しくしています。




■電力ひっ迫注意報って何?



国も最近の電力ひっ迫には強い危機感を抱いています。そこで従来の「電力需要ひっ迫警報」に加え、「電力需要ひっ迫準備情報」と「電力需要ひっ迫注意報」を新設。より柔軟な注意喚起を可能にし、この夏の電力ひっ迫に備え全国に節電要請を行っています。発令された時に備え、それぞれの内容を確認しておきましょう。


・電力需給ひっ迫準備情報

ピーク時の電力需要に対する供給の予備率(※)が5%を下回ると予想される場合、その前々日の午後6時をめどに発出されます。早めに警戒・節電を呼びかけることで、本格的な電力ひっ迫を防ぐのが目的です。



・電力需給ひっ迫注意報

前日になっても予備率が5%を下回ると予想される場合、午後4時をめどに発令され、本格的な節電を呼びかけます。2022年6月の新設後、同月の電力ひっ迫に対してさっそく発令されています。



・電力需給ひっ迫警報

電力の需給状況が非常に厳しく、予備率が3%を下回ると予想された場合に発令されます。このラインを超えてしまうと電力供給が崩壊するおそれがあるため、一般市民もできる限りの節電をしなければなりません。


なお、2022年3月の電力ひっ迫では初めて警報が発令されましたが、出されたのが前日の午後9時と遅かったために、節電への取り組みが遅れてしまったとして強い批判を浴びました。ひっ迫注意報および準備情報が新設されたのは、この時の反省を生かし、より迅速な対応を可能にするためなのです。


※予想される供給力から最大需要を引き、さらに最大需要で割った値。電力の需給安定のためには、最低でも予備率を3%以上確保する必要があるとされる。




■電力ひっ迫を防ぐために一人ひとりができること


電力需給ひっ迫注意報や警報が発令された時は、電力需給の崩壊という最悪の事態を防ぐため、私たち一人ひとりが節電に協力する必要があります。では、具体的にどのようなことをすればいいのでしょうか。


まず意識すべきなのは、エアコンの室外機の周辺に物を置かないことです。室外機の吹き出し口に物が置いてあると、空気が流れにくくなって排出された熱を再び吸い込んでしまい、冷房効率が低下します。もし室外機周辺に物が置いてあるなら、すぐにどかしましょう。


また、エアコンは空気を冷やす時に最も電力を消費します。あまり頻繁にドアを開け閉めしていると、そのたびに室内の温度が上昇し、再び部屋を冷やすために多くの電力を消費してしまいます。冷房効率を上げるためにも、ドアの開け閉めはなるべく少なくするのがおすすめです。


そして、まだ白熱電球を使っているのであれば、LED照明に交換しましょう。LEDは白熱電球に比べて電力消費がとても少なく、節電に効果を発揮します。たとえば、54Wの白熱電球を9Wの電球形LEDランプに交換するだけで、年間2000円以上の電気代節約になるのです。賢く節電して、この夏の電力ひっ迫を乗り切りましょう!