部屋の照明を選ぶ時、最も大切な要素といっていいのが「明るさ」です。十分な明るさがなければ、安全かつ快適に過ごすことはできません。かといって、必要以上に明るい照明を選ぶと、かえって過ごしにくくなることもあります。どうすれば、適切な明るさの照明を選ぶことができるのでしょうか。ここでは、照明の明るさ選びのポイントをご紹介します。
■目的に合わせた、過ごしやすい明るさ選びが重要です!
照明の明るさ選びの基本は、その部屋の用途や使用者に合ったものを選ぶことです。たとえば、読書や勉強に集中したい場合と、ソファに腰掛けてのんびりテレビを見たい場合とでは、適切な明るさが変わってきます。
また、部屋の雰囲気作りも照明の重要な役割です。こう聞くと、照明器具のデザインに目が行く方も多いかもしれませんが、照明の色や明るさも雰囲気を左右する要素のひとつ。適切な色や明るさを選べば、部屋をよりおしゃれにしたり空気を引き締めたりできるのです。
では、具体的にどの程度の明るさを選べばいいのでしょうか? ポイントはいろいろあるのですが、目安となるのは照明器具の明るさを表す数値です。かつて白熱電球が主流だった頃は、消費電力量を表す「ワット(W)」が単位として使われ、「部屋の畳数×30W」が目安とされてきました。
しかし、LEDが主流となっている現在では、光源から全方向に放射される光の量を表す「ルーメン(lm)」が主に使われています。リビングやダイニングのようにしっかり明るくしたい空間の場合は、「部屋の畳数×400lm」が目安です。もちろん実際には、光の色や照明器具のデザイン、部屋の環境なども考慮して決める必要があります。
■人の感覚から見た照明の明るさのポイント
次は、人の感覚の観点から明るさ選びについて考えてみましょう。まず意識しておきたいのは光の色(光色)です。実は照明の放つ光の色には、「電球色」や「昼白色」などいくつかの種類があります。ここにこだわって照明を選ぶと、より過ごしやすい空間が作れるのです。
たとえば、オレンジがかった温かみのある電球色は、リラックスしたい空間に適しており、リビングや寝室に向いています。また、最も自然光に近い昼白色は、どのような部屋でも使いやすいのが魅力です。特にキッチンやダイニング、洗面所など、「手元がよく見える」「物の色が正確にわかる」ことが求められる場所で効果を発揮します。
そして、世代によって明るさの感じ方が違うことにも目を向けましょう。一般的に、高齢者は目の水晶体が白濁し黄色くなる関係で、眩しさに敏感です。その反面、視覚機能の衰えにより、快適に作業をするためには若年者の2倍~3倍の明るさを必要とします。
そのため、高齢者の方が主に生活する空間では、光源が直接目に触れないタイプの照明器具を使ったり、間接照明を活用したりするのがおすすめです。これらに限らず、照明選びでは「実際にそこを使う人がどう感じるか?」を必ず意識しておきましょう。
■部屋の構造やデザインから見た照明の明るさのポイント
照明の明るさ選びにおいては、部屋の構造も重要なポイントです。たとえば、人の頭程度の高さにある照明と、吹き抜けのような高い天井に取り付けられた照明では、電球が同じでも手元の明るさがまったく異なります。光源が40cm下がると約10%明るくなるので、設置する高さも計算に入れて照明器具を選びましょう。
また、照明器具のデザインにも注目してください。シェードが電球をしっかり覆っているのか、電球がむき出しになっているのかによって、明るさや光が照らす範囲は大きく異なります。シェードの素材が光を通すのか通さないのかも、明るさや雰囲気を左右する要素です。どこをどの程度照らしたいのかによって、照明器具を使い分けるといいでしょう。
そして、忘れてはならないのが配光角度です。照明の光の広がり方は、大きく分けて全方向・広配光・下方向の3種類があります。リビングでは全方向タイプがよく使われますが、部屋によっては特定の方向のみを照らしたいこともあるでしょう。照明器具の種類や設置場所も考慮して配光角度を選ぶと、より快適な明るさが実現できます。
このように照明の明るさというのは、環境によって感じ方が変わるものです。見た目の好みだけではなく、さまざまな条件を考慮して、用途に適した色や明るさの照明器具を選んでください。