みなさんは、「火災の発生しやすい季節」と聞いて、いつを思い浮かべますか? おそらく多くの方は、乾燥し暖房器具の使用が増える冬~春先だと考えるでしょう。これらの時期に火災が増えるのは確かですが、他にも注意すべき季節があります。それは、梅雨から夏場にかけてです。
ここでは、梅雨に起きる火災の原因はその予防法をご紹介します。
■梅雨の時期に多い火災原因「トラッキング現象」とは?
梅雨から夏場にかけての火災の原因では、「トラッキング現象」に特に注意する必要があります。トラッキング現象とは、コンセントやプラグ、電源タップなどの周りにたまったホコリが原因で発火する現象です。たまったホコリが水分を含むと、プラグの刃の間に微弱電流が流れて火花放電が発生します。その結果、刃の間にある樹脂部分が炭化して電気が通るようになり、発火してしまうのです。
トラッキング火災はその性質上、目の届かない場所で何の前触れもなく発生する可能性があります。夜中に焦げ臭さを感じて起きてみたら、コンセントの周辺が燃え盛っていた……などということもありえるでしょう。条件さえそろえばどこでも発生するので、住宅はもちろんオフィスや公共施設でも注意しなければなりません。
■なぜ梅雨はトラッキング火災・製品火災が多いのか
火災の発生件数の統計を見ると、6月や7月は1年の中でも少なくなっています。しかし、電化製品や燃焼機器から発火する「製品火災」に限定すると、梅雨から夏場にかけては年間でもトップクラスに多いのです。その原因の1つがトラッキング火災というわけですが、なぜ梅雨や夏場に増えるのでしょうか。
主な理由としては、やはり湿度の上昇が挙げられます。じめじめした梅雨時になると、プラグやコンセントにたまったホコリが水分を吸いやすく、トラッキング現象の発生確率が高まるのです。また、暑くなってきてエアコンや扇風機をフル稼働させるので、それらを発火源とする火災が増えるという事情もあります。
いずれにしても、「火災が発生しやすいのは冬場」という先入観は捨てなければなりません。「梅雨は雨も多いし、湿度が高くて発火しにくいから安全だろう」という考え方は危険なのです。
■エアコン・扇風機・コンセントなどに要注意
次は、トラッキング火災の発生原因について、もう少し具体的に見ていきましょう。前述した通り、梅雨に入るとエアコン・扇風機・除湿機などを稼働させるため、それらを発火源とする火災が発生しやすくなります。特に注意が必要なのが、不適切な環境で保管されていた電化製品を引っ張り出してきた時です。
前年の夏から放置されていた扇風機や除湿機、電源タップに延長コードなどは、おそらくたっぷりとホコリをかぶっているでしょう。それらをそのまま使えば、トラッキング火災が発生する可能性は非常に高くなります。また、単純に経年劣化していて異常な電流が流れ、発熱・発火してしまうケースも珍しくありません。
さらに、ホコリを取るための洗浄にも注意が必要です。エアコンの内部を洗浄すると、洗浄液の一部がエアコン内に残留し、内部でトラッキング現象を引き起こすことがあります。自力で適切な洗浄をする自信がなければ、専門業者に洗浄を依頼するのが望ましいでしょう。
■トラッキングによる火災を防止する方法
それでは実際のところ、どうすれば梅雨や夏場のトラッキング火災を防げるのでしょうか。最大のポイントは、長期間使用しない電化製品のプラグを抜いておくことと、ホコリがたまらないよう定期的にプラグ・コンセント周辺を掃除することです。乾いた布を使ってしっかりと拭いて、ホコリや湿気を取り除きましょう。
また、使っていないコンセントをカバーで覆ったり、トラッキング防止器具をプラグに取り付けたりするのも有効です。電源タップや延長コードの中には、絶縁カバーが付いた耐トラッキング性の高い製品もあるので、これらを使用すればトラッキング火災のリスクを下げられます。
そして何より、製品に少しでも異常があれば使用しないことが大切です。久しぶりに扇風機やエアコンを稼働させる時は、必ず丁寧にホコリを拭いた上で、破損箇所がないかチェックしましょう。稼働後もしばらく様子を見て、異音・異臭・おかしな動きなどがあればすぐに停止させると、トラッキング火災を防ぐことができます。